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光学ブログを始めようと思ったら、ソフト開発が始まり、なぜかXのフォロワーが1000人増えた件

AIがあれば楽勝のはずでした。光学ソフトの自作、CMSの自作、想定外のバズ。回り道だらけの開設記です。

「光学のブログを始めよう」と思い立ったのは、ずいぶん前のことです。
レンズ設計に携わってきた人間として、光学の面白さを伝える場所を作りたい。やることは簡単なはずでした。ブログを開設して、記事を書く。以上。

…のはずだったのですが、気づけば光学ソフトを自作し、CMS(記事を管理する仕組み)まで自作し、なぜかブログより先にXがバズっていました。
今日はその回り道の記録を、日記として置いておきます。

当初の目論見:大AI時代、アウトプットは楽になったはずだった

今は大AI時代です。文章の下書きも、図の作成も、AIに頼めばあっという間
…のはずでした。私の目論見はこうです。

「アウトプットのコストが劇的に下がった今なら、働きながらでも毎週1記事くらい書ける。楽しく読める記事をどんどん出して、盛り上げていこうぜ」

先に白状しておくと、この目論見は見事に外れました。何がどう外れたのか、順番にお話しします。

発信の場所選び:ブログか、noteか、Xか

まずは場所選びです。候補は3つ、独自のブログか、noteか、Xか。当時の私の頭の中を表にすると、こんな感じでした。

ブログ
(独自サイト)
noteX
書きやすさ△ まず環境づくりから
でもAIで楽になったはず
◎ 登録してすぐ書ける◎ 短文でOK
レイアウト
自由度
◎ なんでも自分次第△ 決まった型の中で✕ ほぼ選べない
記事の
資産化
◎ 自分の場所に貯まる○ 貯まるが場所は借り物△ TLを流れて消える
流入・拡散✕ 最初は誰も来ない○ プラットフォーム内の回遊がある◎ 拡散力は最強
人との
つながり
△ コメント欄くらい○ スキ・コメント◎ 会話が生まれる

※あくまで始める前の主観です。

実は最初はnoteのつもりで、実際に少し書いてもみました。手軽さは抜群です。ただ、書きながら考えが変わってきました。

  • 記事という資産は、プラットフォームに預けるより自分の場所に貯めていくほうが、将来効いてくるんじゃないか?
  • そもそも趣味なんだからレイアウトも自分の好きなように作って美しさ追求したくないか?

表の「資産化」と「自由度」の行を取って、独自のブログを選びました。
※ゴチャゴチャ言っているけど、結局レイアウトの美しさ追求したかっただけ説あります。。

ただしブログには表のとおりの弱点があります。開設直後は、誰も来ません。集客という点では圧倒的に不利です。そこでXを併用することにしました。日常のちょっとした発信やコミュニケーションは、拡散力とつながりに強いXで受け持ち、じっくり読む記事はブログで育てる。それに何より、同じ光学好きの方々とつながってみたかった、というのが本音です。

理想:思い描いていた理想のワークフロー

当初頭の中にあった、僕の考えた最強のワークフロー

図1: 当初思い描いていたワークフロー

私がアイデアを出す。AIが記事と図に仕上げる。ブログに載せる。Xは合間につぶやく。矢印3本、実にシンプルで、美しい!
…となるはずでした。

現実:AIがいれば楽勝!…ではなかった

図1に、実際に起きたことを描き込みました。
私とAIの間にとてつもないループが発生することに気づきました。

図2: 実際に始めてみたら(私とAIの間に修正ループが発生)

(1)ブログでの想定外

書き始めてすぐこんな壁にぶつかりました。

  • 思ったような記事になってくれない。
    大枠は悪くないのに、細かいニュアンスを直したいとき、いちいちAIに言葉で指示を出すのがとにかく面倒。そして最後の詰めが、どうしてもいい感じに仕上がらない。
  • それっぽいのに、嘘が混ざっている。
    もっともらしい文章の中にしれっと間違いが紛れ込む。私のコンセプト的にこれをやると致命傷なので、結局ぜんぶ自分の知識で検算することになります。
    そして、微修正をAIに任せるとまた間違えてくる。
  • 図が描けない。
    光学の記事の主役は図です。光線がレンズを通ってどう曲がるか、実際にどのように映るのか。言葉を尽くすより図1枚のほうが早い。
    ところがAIに描かせた絵や図はめちゃめちゃで、まるで使いものになりません。かといって、思い描いたレンズ図を出せる道具は個人環境に見当たらない。業務用の光学設計ソフトは個人で買えるような代物ではありませんし、フリーのツールを探すもどれも決定打に欠ける。。
思い通りにならない図の例
AIに描かせた図の例。光路図の光線の色がおかしい
図3: 光路図の色がおかしい例。1本目の記事を書こうとしたとき、これを一つずつ直すのが大変で心が折れた

体感としては、AIは80%まではものすごい速さで連れて行ってくれましたが、問題は残りの20%でした。
AIはそれっぽいものまではすぐ作ってくれますが、残りを作り込むのが大変。そしてAIの生成物を人の手で直すのは一苦労だということに気づきました。

(2)Xでの想定外

こちらの誤算はもっと単純で、何を呟けばいいのか思い浮かばない。
ひねり出しても、なんだかしょうもないことしか出てこない。「日常の発信はXで」と言えば聞こえはいいですが、その日常が呟きのネタになる気がしませんでした。

軌道修正:もう道具から作っちゃおうぜ

ここで開き直ることにしました。

  • きちんとした光学の記事を作るには、光学ソフトを自作したほうが早い
  • 記事の最後の詰めは、AI任せではなく自分の手でさっと直せる仕組みがないと、あまりに効率が悪い

——よし、光学ソフトもCMSも作ろう。

冷静に書くと順番がおかしいのですが、当時の本人は「ちょっと寄り道するだけ」のつもりでした。Pythonで光線を追跡して光路図を描くソフトと、下書きから公開チェックまでを一つの画面で回せる自作CMS。それぞれの開発の顛末は、これも別の回で書きたいなと思います。
※24時間365日レンズ設計ソフトに触りたかったのが本音の可能性もあります。
※独自blogなんかにせず潔くnoteにしておけばCMSなんていらなかったのに ※blogにするならするでwordpressでも使っておけばよかったのに

できあがりつつある道具たちの画面を、少しだけお見せします。

図4: 開発中の光学ソフト
開発中の光学ソフトの画面。レンズデータ表と、レンズ図・収差図・MTF・周辺光量比のプロットが並ぶ
図5: 開発中のCMS
開発中のCMSの画面。ネタ・執筆中・ゲート待ちのカンバンと、記事編集フォーム

※光学ソフトの画面に表示しているレンズデータは、公開特許の実施例です。

想定外の発生:ブログより先に、Xがバズった

道具づくりの合間に、できたての自作ソフトで描いた光路図を「光路図を愛でる会」と題してXに投稿していました。 相変わらず呟くことは思い浮かばないので、手元の作業風景をベースに、ちょっとした小ネタを挟んでつぶやき始めたのがきっかけです。

光路図を愛でる会第一号
「光路図を愛でる会」第1号のX投稿のスクリーンショット。超広角ズームの公開特許の光路図を添えている
図6: 記念すべき第1号の投稿。自作ソフトで描いた光路図を添えて

すると、そんなことを続けているうちに想定外に伸びまして。海外のエンジニアの方々からもフォローをいただき、フォロワーさんは気づけば1000人を超えていました。

図7: Xフォロワー数の推移。7月末の3日間で139人から1,553人に

「しょうもないことしか思い浮かばない」と悩んでいたのに、意外なほど興味を持ってもらえる人がいることに驚きました。
ブログはまだ挨拶記事1本なのに、先にXでご縁が広がるという、完全に想定外の順番です。このとき何が起きていたのかも、また別の回で記録に残そうと思います。

現実のワークフロー

というわけで、現在の頭の中はこうなっています。

図8: 現実のワークフロー(4レーン構成)

図1と見比べてください。矢印3本だったはずが、レーンは4本に増え、そのうち2本は「道具づくり」です。作った道具が図版と仕上げを支え、ようやくブログまで一本につながりつつあります。
ちなみに②のレーンでは、「こんな図が欲しい」「このアルゴリズムで計算したい」と注文しては「これは違う!」と突き返す無限ループが今も回っています。思ったより大変になっていますが楽しいのでヨシ。当初のシンプルさは見る影もありませんが、不思議なことに、こちらのほうがちゃんと回っています。

思い通りにならなかったけど充実した毎日

何もかもが思い通りになりませんでしたが、振り返ってみると妙に充実しています。

ブログを作ろうと思ったらソフトまで作っている。冷静に見れば狂った思考なのですが、そこにこそ面白さがあって続けられている
…このこと自体が、私にとっては一番の発見でした。思い通りにならなくても、あれこれトライしたことで得られたものは、目論見どおりに進んだ場合よりずっと多かった気がします。

そんなわけで、肝心のブログ記事はまだ全然作れていません。なのでまずは、この開発の備忘録から残していくことにしました。本命の記事の準備を進めつつ、その時々の考えや顛末を、この「おもちゃ箱」に振り返れる形で置いていきます。

気長にお付き合いください。


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